講師は見た! 上手くいった IT 新人研修 、上手くいかなかった IT 新人研修(1)


2020-04-09

筆者は、これまで長年に渡って、様々な企業で、新人研修の講師を務めてきました。

担当したのは、

  • IT 基礎(ハード、ソフト、データベース、ネットワーク、セキュリティ)
  • アルゴリズム
  • プログラミング
  • Web アプリ開発

などです。

筆者の講師経験から、上手くいった新人研修、上手くいかなかった新人研修、それぞれの理由を振り返ってみます。

新人研修の教育担当者様の参考になれば幸いです。

上手くいった事例(その 1 )中心となる新人を巻き込む 😇

対象 大手システムインテグレータ
内容 Java プログラミング
うまくいったこと クラス全体で研修を楽しめたこと
うまくいった理由 リーダーとなる受講者と頻繁に相談したため

上手くいくときには、偶然が重なるものです。

偶然、20 人ほどのクラスの中に、リーダーシップを発揮してくれる受講者がいました。偶然、彼と筆者は、コーヒーが好きだったので、休憩時間に何度も自動販売機コーナーの前で一緒になりました。

「先生、何となくクラスが盛り上がっていませんよね」
「それじゃあ、こういうことをしたらどうだろう」

といった話を何度かしている内に、彼がクラスをまとめ、講師がサポートする、という体制ができあがりました。

そして、クラスは、とても良い雰囲気になりました。眠そうな人など、ひとりもいません。お互いに教え合い、質問や意見があれば遠慮なく発言し、クラス全体で研修を大いに楽しんでくれました。

 

そして、最終日に、彼は「先生のお陰で楽しく研修ができました」と言って、クラス全員の寄せ書きと、花束と、缶コーヒーをくれました。

筆者は、感動して涙が出そうになりました。その場では言えませんでしたが、「筆者のお陰ではなく、君のお陰です」ありがとう。

上手くいかなかった事例(その 1 )「聞いてたんと違う」 😱

対象 地方のシステム開発会社様
内容 基本情報技術者試験のJava対策講座
上手くいかなかったこと 準備した内容と受講者の前提知識が合わなかった
上手くいかなかった理由 事前の確認不足

「地方のシステム開発会社で、基本情報技術者試験の Java の直前対策講座があります。内容は、問題演習と解説で 1 日ですが、いかがでしょう?」
「たまには、遠方もいいですね! ぜひやらせてください」

というやりとりで引き受けた研修です。

 

「直前対策講座」「問題演習と解説」ということなので、過去問題と解説資料を用意しました。これで、何の問題もないと思っていました。

ところが、研修当日、受講者に Java の経験を聞いたところ、何とビックリ! ほぼ全員がこの場で Java を初めて学ぶとのことです。

これでは、用意した資料の内容がまったく合いません。大いに焦りましたが、1 日しかないので、「英語と数式だと思って Java のプログラムを読む研修」に切り替えました。

 

事前に、研修の内容だけではなく、受講者の前提知識を確認する重要性を痛感させられた研修でした。

上手くいった事例(その 2 )受講者の興味を知る・並走する 😇

対象 DOJO( SE プラス社の新人研修プロジェクト)
内容 Java による Web アプリ開発実習
上手くいったこと プログラミングの楽しさに目覚めてくれた
上手くいった理由 長時間悩んだバグの原因を見つけられたため

Java による Web アプリ開発実習に、あまり興味を示さない受講者がいました。

彼女は、ある程度、開発が進んだときに「 ○○ という言葉は登録できるのに、△△ という言葉は登録できない」というバグに遭遇しました。

この摩訶不思議なバグに、彼女は、大いに興味を持ったようです。いつもは質問しないのに、この時ばかりは、質問してくれました。

筆者は、彼女と一緒にあれこれ試行錯誤して、バグの原因を探しました。半日ぐらい時間をかけて、1 つのバグの原因を探しました。

そして、ついに原因が見つかったとき、飛び上がって喜び合いました。その日の彼女の日報には「小躍りするほど嬉しかった」と書かれていました。

 

プログラミングの楽しさに目覚めてくれたのです。上手くいきました。

上手くいかなかった事例(その 2 )合わない講師 😱

対象 大手シンクタンク様
内容 基本情報技術者試験を題材とした IT 基礎
上手くいかなかったこと 受講者が講師を受け入れなかった
上手くいかなかった理由 講師がいきなり講義を始めたため

100 人を超える新人さんたちを、複数のクラスに分けて実施した研修でした。

研修開始後の最初の休憩時間に、筆者の教室に別の教室の新人さんたちが、ゾロゾロと入ってきました。

何事があったのかと、セミナー会社の営業担当者に聞くと「別の教室の講師がクビになった!」とのことです。

私たち講師というものは、初対面の受講者の注目を引くために、やや くだけた自己紹介をしたり、「なるほど!」と思わせる小ネタを披露したりするものです。

 

ところが、クビになった講師は、それらを一切しないで、いきなり講義を始めため、受講者が講師を受け入れず、研修が成り立たない雰囲気になってしまったのです。

その講師は、経験豊富なベテラン講師だったのですが、なぜなのでしょう。

 

新人研修の教育担当者様は、講師に任せきりにしないで、ときどき研修の様子をチェックしてください。

上手くいった事例(その 3 )ITを楽しんで好きになる 😇

対象 医薬品開発支援会社様
内容 IT基礎(ハードウェアとソフトウェア)
上手くいったこと 受講者の人生を変えるきっかけを与えられた
上手くいった理由 研修で人生初の体験をしたため

この企業は、IT が専門ではないので、研修開始時の新人さんたちには「なぜ私たちが IT を学ぶの?」という戸惑いが感じられました。

研修の内容は、パソコンの分解実習と、プログラミング実習です。

これらは、「未経験者が 1 日で楽しく IT 基礎を学べる研修を実施してほしい」というリクエストに対して、筆者が提案したものです。

企業の教育担当者様も、その内容で上手くいくかどうか不安だったようですが、いざ研修を始めてみると、皆が目を輝かせて大盛り上がりでした。

そして、研修後に新人さんの 1 人が「 IT 部門に配属してほしい!」と言い出したそうです。

 

その新人さんは、実際に IT 部門に配属され、現在では、どんどん実力を伸ばしているとのことです。

受講者の人生を変えるきっかけを与えられたのですから、最高に上手くいった研修だったと思います。

記事をお読みいただきありがとうございます。

筆者の拙い講師経験から、あれこれ偉そうなことを書いてしまいましが、本音を言うと、新人研修が上手くいうかどうかは、やってみるまでわかりません。

あれこれ工夫してカリキュラムを考えて、最適と思われる教材を用意しても、それがピッタリと合うかどうかは、実際の受講者に触れるまでわからないからです。

 

受講者に合わせて、その場で研修内容の調整ができる講師に依頼すること。これが上手くいくために最も重要なのだと思います。

そういう講師になれるよう、これからも精進を続けてまいります!

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矢沢 久雄

『プログラムはなぜ動くのか』(日経BP)が大ベストセラー
IT技術を楽しく・分かりやすく教える“自称ソフトウェア芸人”

大手電気メーカーで PC の製造、ソフトハウスでプログラマを経験。独立後、現在はアプリケーションの開発と販売に従事。

そのかたわら、書籍・雑誌の執筆、またセミナー講師として活躍。軽快な口調で、知識0ベースの IT エンジニアではダントツの評価。

お客様の満足を何よりも大切にし、わかりやすい、のせるのが上手い自称ソフトウェア芸人。

主な著作物

  • 「プログラムはなぜ動くのか」(日経BP)
  • 「コンピュータはなぜ動くのか」(日経BP)
  • 「出るとこだけ! 基本情報技術者」 (翔泳社)
  • 「ベテランが丁寧に教えてくれる ハードウェアの知識と実務」(翔泳社)
  • 「ifとelseの思考術」(ソフトバンククリエイティブ) など多数